REPORT
活動報告
2024.10.25
【開催レポート】
新たな一歩を踏み出すべく、全国から西湖に若者たちが集う
~「U18 EDUTAINMENT CAMP」初開催~
一般財団法人みらいエデュテインメント財団は、2024年7月25日から28日までの4日間、山梨県・西湖のAMUSE VILLAGEにて、エデュケーション(教育)とエンターテインメントを掛け合わせた高校生世代向けキャンプ「U18 EDUTAINMENT CAMP」を初開催しました。
ダイジェストムービー
エデュケーション×エンターテインメント=これまでにない学習体験
本イベントは、社会課題やグローバル活動への高い関心を持つ18歳以下の若者たちが、「これからの未来をともにつくる新たな仲間と出会い、新たな自分と向き合うことで、新たな一歩を踏み出していく」ための機会を、エデュケーションとエンターテインメントを掛け合わせた“エデュテインメント”の力で創出するこれまでにないキャンプです。
イベントには各界で活躍する豪華ゲストも招き、仲間とともに交わり・学び・遊ぶための計4日間にわたるプログラムを企画しました。
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【DAY1】
仲間と出会い、自分を知る、始まりの一日
数多くの応募から選ばれたのは、海外からの参加も含め、全国から集まった68名の参加者たち。当日は東京駅と河口湖駅、二手の出発地に分かれての会場入りです。事前のオンライン交流はあったものの、全員が対面する初めての瞬間。運営メンバーとゲストから出迎えを受ける参加者たちの表情は、期待感が見え隠れする晴れやかなものでした。
未来をもっとおもしろくする、これまでにない4日間の幕開け
司会のコーリア留奈さんの挨拶を皮切りに、キャンプの始まりを告げるオープニングセッションが開演。待機時間の賑やかな雰囲気から一変し、壇上に参加者たちの熱い視線が集まります。
運営メンバー及び大学生アンバサダー紹介の後に行われた理事長挨拶では、みらいエデュテインメント財団・大里洋吉理事長からのプレゼントとして特別映像を贈り、参加者たちを鼓舞しました。
オープニングセッションの熱気を残したまま行われた、本イベント初のゲスト講演では、現職の兵庫県芦屋市長である髙島崚輔さんが登壇。“私たち若者が社会を変えるには?”と題し、ビジョン・仲間・対話の3つの視点から、リーダーが果たすべき役割について語ってくれました。
ゲスト講演後には、会場内ツアー、ガイダンス、アイスブレイクを行いました。アイスブレイクとして行ったのは、多様性をテーマにした○✕ゲーム「多様性マップ」。「海外に3か月以上住んだことがある」「いま好きな人がいる」「これから起業したい」など、さまざまな議題で参加者の属性を可視化し、仲間への理解を深める時間となりました。
「地域」を知るエクスカーション&「仲間」を知るエンタメアクティビティ
夕方からは、初日のメインプログラムであるエクスカーション&エンタメアクティビティを実施。地域と仲間への理解を深めるための4つのプログラムが企画され、参加者たちはそれぞれ事前に選択したプログラムを体験しました。
「チームで湖から樹海までを巡る」湖上ワークショップ
唯一の屋外実施プログラムである湖上ワークショップ。会場付近の西湖と青木ヶ原樹海を巡り、地域の自然や歴史、自分自身と向き合うための時間を設けました。西湖もカヤックもほぼ全員が初めての体験ということで、参加者たちは移動時から表情に期待感が溢れていました。複数人で乗れるHOBIE(ホビー)の足漕ぎカヤックのレクチャーを受けて、みんなでいざ湖上へ。単なるアクティビティではなく、“湖の上で過ごす体験”としての感動を味わいつつ、西湖唯一の富士山ビュースポットとして知られる根場浜を目指します。
ガイド先導のもと、約30分かけて根場浜に到着した参加者たちは、しばしの休憩を挟み、続けて湖上で眺めた青木ヶ原樹海の散策に出発。湖上とはまた一風異なる自然に触れながら、樹海の生い立ちについて学ぶことで、地域ならではの歴史について理解を深めました。
「失敗を自信に換える落語」を通じた笑い創作ワークショップ
落語の聞き方を学び、落語を演じることにチャレンジする笑い創作ワークショップ。講師は、人を否定しない笑いを学べるカリキュラムづくりなどのお笑い教育事業を展開する落語教育家・楽亭じゅげむさんです。参加者たちは自身に芸名をつけて、過去の失敗を落語にして発表。“みんな違ってええやん”の精神に従い、日常の失敗を恐れない気持ちや、表現することの楽しさを学びました。
「自分たちでつくり、自分たちで演じる」演劇ワークショップ
「自分たちでつくり、自分たちで演じる」ことをテーマにした演劇ワークショップは、全国の小中学校・高校・大学・特別支援学校で演劇を用いたワークショップを実践し続けるなど、演劇ワークショップ・ファシリテーターとしても活動する俳優の菊池ゆみこさんを講師に迎えて行われました。チームで台本を0から作り・演じ・届ける体験のなかで、お互いの個性や新しい自分を発見することが目的です。参加者たちは4つのユニットに分かれて台本を考案。「みらいエディテインメント演劇祭」と称した発表会が行われました。
「線」から自分と相手への理解を深める ドローイングワークショップ
山梨県富士河口湖町のアーティスト・イン・レジデンス「6okken」のメンバー、山口みいなさんを講師に迎えたドローイングワークショップ。創作とは切り離せない、残すことや人に見せることから離れ、その瞬間の自分の衝動を“線”として表現しました。最後にはお互いの線を見て感じたことをチーム内で共有。自分自身と相手への理解を深める時間となりました。
新たな自分と向き合うためには、まず今の自分を深く知ることが必要
初日の締め括りは、自分たちより少し先に活動し始めた先輩たちのエッセンスを吸収し、自分のやりたいことは何なのか、自己理解を深めるための時間。「出身地や宗教、言語は関係ない。スケートボードがあれば人と繋がれる」という思想とともに、スケートボードのカルチャーやライフスタイルを広めている、プロスケーター・動画クリエイターのSHIMONさんによるナイトセッション「『好きなこと』のレンズで社会と向き合う」が始まると、夕食後の眠気も吹き飛んだ様子の参加者たち。大学生ユーチューバーとして活動を開始し、30以上の孤児院や学校への訪問を経て、2022年にネパールにスケートパークを誕生させたSHIMONさんのライフヒストリーから、「好きなことを仕事にする」という事例を学びます。
続けて行われたトークセッションでは、初日に講演を行ったゲストの髙島崚輔さんとSHIMONさんに加え、今回のイベントに協力してくれた運営メンバーも登壇しました。運営メンバーからは、「“違い”を価値にする多様性社会」の実現を目指し、高校生の時に株式会社Culmonyを設立した運営代表の岩澤直美さん。そして、「ストレスフリーな子育て環境を作る」というビジョンのもと、株式会社kazamidoriを大学4年次に設立した久保直生さんの2名が登壇しました。
トークテーマは、登壇者たちの高校生時代の話。終盤に行われた質疑応答では、「高校時代にやって良かったこと」「周りの大人の意見をどのように聞くのか」「今の時代に学歴は必要なのか」など、登壇者の実体験に基づいたアドバイスを求める質問が寄せられていました。
【DAY2】
多様な課題と先駆者から得た学びでアイディアを創出
2日目のテーマは、「課題への理解」。初日のワークショップでエンタメアクティビティを選択した参加者たちも、早朝の西湖散歩で地域の自然に触れました。前日も夜遅くまで活動していたという参加者の浦山結太さんに話を伺うと、「昨日は名古屋から始発で来たから疲れているけれど、今日は講演がメインだと聞いているので、情報をたくさん吸収し、最終発表に向けて頑張りたい」と2日目の意気込みを語ってくれました。
現在から未来へ、自分から社会へと思考をシフト
2日目の午前中は、「多様性ビンゴ」「フューチャーインタビューワークショップ」「名刺づくりワークショップ」と、仲間と自分についてさらに深掘りし、社会課題と向き合うための土台づくりを行うプログラムが続きます。
午後になり、いよいよ社会課題と向き合う初めてのワークショップ「西湖の税収をテーマに課題解決策を作ってみるワーク」を実施。開催地である富士河口湖町の歳入を2倍にするためにはどうすればよいか、9つのグループに分かれ、チーム対抗型のアイデアソン形式で進行します。
各グループの代表者がプレゼンを行い、ドバイモデルの法人税や実証実験場の提供、地元住民によるガイドハイヤーの提供など、多角的な視点から生まれるアイディアに会場も白熱。
最後はゲストの愛知県日進市議会議員・吉野裕斗さんによる講評で、多方面かつ連続的にお金が生まれるブライダルを切り口とした解決策、「富士婚」を発表したグループが優勝した。
多種多様なアプローチで社会課題と向き合う先輩の背中
ワークショップの流れを汲み、引き続き社会課題をテーマにしたピッチとトークセッションがスタート。
現職の愛知県日進市議会議員であり、総合型選抜の専門塾や、U23サミットの運営法人の代表も務める吉野裕斗さん。
自身の多様な経験から「社会課題を解決するプレイヤーの支援」の必要性を感じ、大学4年次に株式会社talikiを設立し、現在は社会課題解決ベンチャーキャピタルの国内最年少の女性代表として投資活動にも従事する中村多伽さん。
社会派クリエイティブを掲げ、「思想と社会性のある事業作り」と「世界観に拘る作品作り」を軸に、広告から商品プロデュースまで領域を問わず手掛ける越境クリエイターとして知られる、株式会社arca CEOの辻愛沙子さん。
探求学習の普及や教員研修、働き方改革の推進に向けたICT(情報通信技術)の学校導入など、「学びの関係人口を増やす」をテーマとした活動のほか、暮らしの交通株式会社を設立し、地方の子どもたちの交通難による選択格差の是正に取り組む運営メンバーの田島颯さん。
各界で活躍する4名の登壇者を迎え、社会課題への入り口や、ユニークなアプローチを見つける方法をともに考えていきます。
質疑応答の時間には、多様なバックボーンをもつ登壇者に向けて、「ソーシャルビジネスに投資できる理由」「中高生が明日からできるスモールステップ」「AIとクリエイティブの未来」など、幅広い領域の質問が投げかけられました。
一番身近で頼りになる、大学生アンバサダーとともに振り返る
濃密な前半戦も終わりを迎える2日目の夜には、振り返りとともに自己課題の解像度を高めるべく、本イベントで一番身近な先輩である大学生アンバサダーに相談する時間を設けました。
【DAY3】
ともにつくる未来を想い、仲間と囲む友情の炎
あっという間の折り返し地点を迎える3日目。最終発表に向けた本格的な準備を進めつつ、夜には仲間たちとさらに交流を深めるためのプログラムを用意しました。
人生の選択肢とファーストステップについて考える
3日目最初のプログラムは、“全ての若者が自分の人生を自分で選択できる社会の実現”に向けて活動する、一般社団法人HASSYADAI.social共同代表理事の三浦宗一郎さんによるセッション。三浦さんのライフヒストリーを通じて、「選択格差」について考えつつ、ゴールに向けて思考を切り替える熱いひと時となりました。特に「人生は選べないことの方が多い」からこそ、人とつながることの重要性を説いたエピソードは、参加者たちから共感の声が多く集まっていました。
続けて行われたピッチとトークセッションのテーマは、「ファーストステップ」です。
3年間の高校生活を「世界一エコな学校」と言われるインドネシアのGreen School Baliで過ごし、COP24(気候変動枠組条約締約国会議)in PolandとCOP25 in Spainに参加、肌が弱かった妹のためにSHINA organicを立ち上げた後、全国220校で環境講演を行ってきた環境活動家・露木しいなさん。
高校生の頃からアクセサリー類の販売を始め、プリントタイツのデザイン・販売を行い、大学在学中にランジェリーブランド「feast」を立ち上げ、現在は株式会社メルカリで生成AIの仕事を行っている、株式会社ウツワ代表取締役のハヤカワ五味さん。
昆虫食歴25年、食材としての虫の魅力を探求し、昆虫に関わる幅広い活動を続け、日本橋に創作昆虫料理を提供するレストラン「ANTCICADA」を開業した篠原祐太さん。
そして、運営代表の岩澤直美さんを加えた4名の登壇者が、それぞれのエピソードを語ってくれました。
質疑応答では、「会社員と起業家の違い」「モチベーションのコントロール」「女性ならではのきつさ」など、初日や2日目と比べてより具体的な質問が寄せられていました。
仲間を集めるために必要な、人に夢を伝える方法を学ぶ
午後からは、本イベントの重要なキーワードである「仲間」と「夢」にフォーカスしたプログラムが始まります。
朝一のピッチを担当してくれた三浦宗一郎さん、伝え方トレーニングサービス「kaeka」の運営を行う株式会社カエカ代表取締役兼スピーチライターの千葉佳織さん、政策共創プラットフォーム「PoliPoli」「PoliPoli Gov」の開発・運営を行う株式会社PoliPoli代表取締役CEOの伊藤和真さんによるトークセッションにて、仲間を集める方法を学び、そのための手段としてスピーチを学ぶ時間を設けました。
スピーチライターの千葉佳織さんによるスピーチワークショップは、2時間半にわたる長尺のプログラムであったものの、最終発表のステージに立つまでの準備として、発声の練習から原稿作成までを体験しながら、参加者一人ひとりが真剣な表情で取り組んでいました。
最後の夜も、最高の仲間たちと
最後の夜は、BBQとキャンプファイヤーで仲間との思い出づくり。キャンプ場に到着する頃には、朝から根詰めていた参加者たちの表情もすっかり明るくなっていました。
BBQでは、ゲストの篠原さんからのサプライズで、ANTCICADAで実際に提供されている「コオロギラーメン」が振る舞われる場面も。最初は恐る恐る口にしていた参加者もいましたが、口へと運んだ後にはみんなで顔を合わせ、魚介類を思わせる上品な味に舌鼓を打っていました。
突然のにわか雨に見舞われたものの、無事に実施されたキャンプファイヤーでは、マイムマイムやステージパフォーマンスで参加者たちの盛り上がりも最高潮に。
【DAY4】
それぞれが踏み出す、68通りの新たな一歩
いよいよ迎えた最終日。参加者68名それぞれが、新たな明日からの一歩を踏み出すべく、4日間で熟成させた夢と決意を胸に、フィナーレへと走り抜けていきます。
4日間の集大成をマイクに込めた1分発表会「明日からの新たな一歩」
開演時刻が近づくにつれ、徐々に緊張感が高まる参加者たち。照明が落ち、静まり返った会場に響くコーリア留奈さんの呼び掛けで、1分発表会「私の明日からの一歩」が開演しました。
運営メンバーとゲストからのエールを受け、トップバッターの安永響さんからスピーチが始まります。マイノリティ教育に対する熱い想いを発表し、堂々とステージを去る姿に勇気づけられたのか、その後も生き生きとした表情でスピーチを行う参加者たち。
ふるさとへの想い、起業に対する情熱、パフォーマーとしての成功など、着々と仲間の夢が発表されるなかで緊張もほぐれてきたのか、発表後に互いの健闘を称え合う姿も見られました。
惜しまれつつも、参加者68名全員の発表が無事に終了。ずっと参加者たちを見守っていた運営メンバーの久保直生さんは、それぞれの新たな一歩を踏み出していく参加者たちに向けて、「ゆっくりでもいい、歩みさえ止めなければ必ずまた会える」と、行動し続けることの大切さを伝えました。
ともに交わり、ともに学び、ともに遊び、ともに成長した4日間が終幕
仲間とともに交わり、ともに学び、ともに遊んだ4日間ももうすぐ幕引き。発表会を終え、団らんのひと時を過ごす参加者たちに、各グループを担当した大学生アンバサダーより修了証が授与されました。
かけがえのない仲間だけではなく、ずっとそばで見守り続けてくれた大学生アンバサダーや、陰で参加者を支え続けてくれた運営メンバーあってこそ成立した4日間。
参加者の古田望乃さんの呼び掛けがあり、解散間際には、この場をつくってくれた関係者に対し、全員で涙ながらに感謝の言葉を伝える場面もありました。
未来をもっとおもしろくする若者たちのプロローグ
今回のイベントを振り返り、「これから長く続く社会に向き合うため、一対一のつながりだけでなく、集団としての価値を発揮できるコミュニティを目指し、イベントを創ってきました。多様性に富んだメンバーが集まり、お互いに刺激し合えたことで、今日の発表につながったと感じています」と語る運営代表の岩澤直美さん。
今回集まった参加者たちは、10月にオンラインで再会する予定であり、今後の展開からも目が離せません。みらいエデュテイメント財団も引き続きサポートを続けていきます。